序章
そこは名も知れぬ人里離れた森の奥、人の住まぬ地で唯一つ残された教会。 くすんだ金色の、床までつくほど長い髪の男が一人、ぞろびくローブをまとい立っている。 その目の前には、台の上に置かれた棺。男は棺に手をかけ語りかけた。 「……今日も眼を開けてくれないのか……」 悲しそうな、けれど愛おしそうな顔で男は見つめる。 棺の中の、眠るように眼を閉じて動かない一人の少女を…… ――君が眼をあけてくれるのなら この命などいらないのに―― 次へ